地域密着型店舗で成功を収め、ネットショップ『デリ・カリーカ』も好調なタバッキ代表の堤亮輔氏に店舗運営の秘密を聞く [後編]

魅力的な店舗を運営し、いかにお客様に喜んでいただける料理やサービスを提供できるのか。それらの戦略や考え方、そして飲食業界の環境の変化に対して、どの様に行動していくべきなのかなどを、人気店の経営陣の方などに語っていただく「食」のウェビナー企画。2021年5月26日にウェビナー第3回「『デリ・カーリカ』に学ぶ、ネットショップ運営の実践テクニック」が実施されます。そこで、第3回の登壇者であり、リ・カーリカデリ・カーリカなどを運営する、タバッキ代表の堤亮輔氏にお話を伺いました。インタビューの[前編]では「既存店舗の話」「魅力的なお店の運営」「スタッフとの関係」などをお聞きし、[後編]では、「コロナ禍の店舗運営」「『デリ・カーリカ』を始めたきっかけ」などをお聞きしました。

堤 亮輔
株式会社タバッキ 代表取締役
1978年、東京都生まれ。21才で料理の道へ。イタリア・トスカーナで修業、帰国後は都内のイタリアンやフレンチ、和食を経験。東横線沿線の学芸大学にあるリ・カーリカ』『あつあつリ・カーリカ、都立大学のカ・リーカリに続き、2020年にラボ機能をもたせた新スタイルのリ・カーリカ ランドを目黒通り沿いに、そして2021年にはネットショップのデリ・カーリカをオープン。

→株式会社タバッキ
→「デリ・カーリカ」サイト

試行錯誤や失敗を繰り返しながら色々な事にトライ

―コロナ禍での店舗運営はどうでしたか? どんな店も一様にダメージはあったと思うのですが、実情を教えてください。

 3月の終わりに緊急事態宣言が出る前から、ちょっとやばいなと思って何回かミーティングはしていました。ロックダウンという名前があることを知って、海外ではやっているらしいと。もしそうなったらというリスクを考えていました。全員不安ですよね。どんなものかわからないから、意見も出ない。そこでトップとしてみんなの不安をなくすことを考えました。

休業補償が出るかどうかもわからない状態のまま、休業してくださいということになった。うちは全員社員なので、固定費が高い。それでやばいなと。これが何回続いたら潰れるんだろうと計算をしましたよ。最低限の損益分岐点をもう一度計算し直して、それを日で割って。1日に必要な分をもぎ取ろうという感覚でしたね。なので、みんなにはサバイバルだと伝えました。アマゾンの森にひとりポツンと落とされて、何もしないと死んでしまう。そういうイメージを共有したんです。さすがにこの時はみんなから意見を求めるのを諦めました。僕が決めるから大丈夫、安心してと。みんなの給料は絶対払えるようにするからと、僕がやることを決めてみんなにやってもらいました。

それがテイクアウトとデリバリーでした。派手にやらないと売れないので、いかにお客さんの目に触れるかが重要です。うちの利点としてそのとき3店舗あったので、全員で料理を作って集めてひとつのお弁当しようと、おつまみセットを作った。全店舗で調理したものを僕が車で回って集めてきて、ひとつのボックスに詰める。「元気になっちゃうおつまみセット」1パック4000円。4人で食べても満足してもらえる内容で、コスパもいい感じにできました。

デリバリーで自分たちの気持ちを届けたいと思ったので、Uberなどではなく自分でデリバリーバッグを買って「デリ・カーリカ」とシールを貼ってやりました。この時、「デリ・カーリカ」が誕生したんです。「リ・カーリカ」と書くよりおもしろくしたいなと思って、「デリ・カーリカ」というシールを作ってもらってバッグに貼りました。最初は僕がバイクで配達。SNSで『配りますよ』と言ったら『ください』『ください』と連絡をいただけました。何回かやって、やり方がわかったところでバイクでのデリバリーはスタッフへバトンタッチ。

僕の手が空いたので、車でも配達することにしたんです。車だと遠くまで行くことができるので、千葉やつくば、町田とかにも行きましたね。毎回SNSで『〇月〇日××方面、●月●日△△方面に僕、堤が配達します』と告知。『こっちの方面に来てください』と言われたら日にちを設定して『その方面行きます』というといくつか注文が入ってくる。ワインも販売できていたこともあって、だいたい単価が1万円以上。そこで7~8軒回ると結構な数字になったんです。それを毎日やっていました。

 ひと段落ついて10月11月と以前の状態に戻ってきたところで、何かもうひとつ手を打っておきたいと、もともとやりたかったことでもあったし、コロナでの必要性を感じて「リ・カーリカランド」が形になりました。コロナじゃなかったら今の形ではなかったかもしれないですね。きっとショップはなかったかな、結構大変なので(笑)。