地域密着型店舗で成功を収め、ネットショップ『デリ・カリーカ』も好調なタバッキ代表の堤亮輔氏に店舗運営の秘密を聞く [前編]

―3号店となった『あつあつリ・カーリカ』はまた雰囲気が違いますよね。

『リ・カーリカ』は地域密着で作ったんだけど「学大っぽくない」と言われたり。予約が取れない、お高く留まっているというイメージがあるというのが、すごく悲しかった。そんなときに学芸大学の象徴的である一角の十字街のど真ん中に物件が出た。スナックや赤ちょうちんが並ぶエリアで7坪というこぢんまりとした空間。ここなら自分が今やりたいことができるなと直感しました。昭和歌謡曲が流れていて、入口は和っぽいけれど、ベースにイタリアンがきちんとある小皿料理を出す。大人心に刺さるような店をコンセプトにしました。

ここまでの3店舗は当初からイメージしていたもので、すべてハード面は僕が考えています。基本大事なのは人なので各店舗が人という媒体を通して個性を出せる様に考えています。だから何より大事なのはスタッフの経験値を上げる事。教育とはちょっと違って経験をあたえるようにスタッフとは向き合っていて、たとえばワインを一緒に飲んだり、生産者訪問したり、地方の催事に出たり。経験を与えているという感覚です。いろいろなことをみんなが経験してくれることで、個性が伸びていく。3店舗それぞれの店がスタッフの個性で仕上がるようなイメージです。よく「コンセプトは?」って聞かれますけど、基本的には人によってできるものだから、変わっていくと思っています。

―そして4店舗目の『リ・カーリカランド』を昨年11月にオープンした。

店を8年間やってきて、自分たちの社会的な存在価値を考えるようになったんです。会社として、地域として、どういう風に見られているのか。僕らができることは何なのか。で、もう一店舗やってみようと。そこでどういう店がいいのか、コロナ禍のこの時代にどういう店があっているのかを考えました。それと、食材の流通を止めないこともこれからの大きなテーマになってくるだろうと思って、ショップを作りました。

『リ・カーリカランド』はタバッキのオフィスにもなっています。持続可能な雇用というのを僕らはイメージして、長く働いている人も多く、スタッフの中に2組カップルができました。2組分の家族ができて、子どももいる。育児をしながらの女性スタッフが働ける場所が欲しいと、オフィスを作ることにしたんです。そしてラボ。社内に料理開発研究部という部署があって、その部署の人がここで料理を開発して、自社製品を作ってショップに並べる。そういうこともしています。

―会社であるタバッキの運営方法について教えてください。

うちは今4店舗あってスタッフ27人が全員社員です。ベクトルを同じにしていくためにアルバイトの雇用をしていません。同じ時間に来て同じ時間に帰るのがうちのスタイル。キッチンが早く来てとかよくありますけど、うちではそれはありません。若い子が自主的に早く来ることはありますけど、それは置いておいて。基本的にみんな同じ時間。仕事が遅れたところがあればそこをみんなで補う。チームを作る上ですごく大事にしている点です。

さらに全店舗、定休日がないんです。だから先輩がいない、店長がいない、シェフがいない日が出てくる。いやおうなしに下の子がそのポジションを週に1回とか2回埋める必要があるんです。そういうことを細かくやっています。シフト作るのはすごく大変ですけど、頼る人のいない日の緊張感とかが自分のキャパシティを少しだけ伸ばす、負荷をかけるような仕事を常にイメージしています。うちには成長プログラミング部という部署があって、若いスタッフを何月までにこのポジションができるようにするにはどうしたらいいか、その子がここまで来たら先輩の休みの日にこのポジションをやらせてみようというのを常に考えています。