トライ&エラーを繰り返して、楽しみながらやっていく / 『eat 麻布十番』に学ぶ、コロナ禍のネットショップ戦略


素材、調理、サービス、空間など様々な工夫をこらし、魅力ある店舗を運営している店舗経営者の方々に、その思考や戦略などのノウハウや発想などのお話を語っていただく「食」にまつわるウェビナー [ 飲食業界の現在と未来 webinar ]。第2回を2021年1月に開催しました。

第2回のWebinarは、渋谷の「食幹」や麻布十番の『eat』など、食に慣れ親しんだ大人たちが日常で楽しめるお店を展開する㈱ディスカバリー代表取締役の佐藤幹氏にご登壇頂きます。これまでに手がけてきた魅力的な店作りやその戦略、そしてコロナ禍における飲食業界の環境の変化に対して、どの様に行動していくべきかなど、今後の店舗のあり方やデジタルツールをいかに活用するか等についてお話いただき、このコロナ禍をネガティブではなくポジティブに捉え、様々な視点から考察し、お店の魅力をどのように拡大していくべきか、そしてデジタルツールなど新たな手段の活用が重要ではないかという話を語っていただきました。

Speaker:佐藤 幹 氏
株式会社ディスカバリー 代表取締役
1975年生まれ、東京都出身。調理専門学校卒業後、数々の和食店で約12年経験を重ねる。2007年に「食幹」をオープンし、現在は2020年6月にリニューアルした「麻布十番eat」を手がけ、オーナーシェフとして和食の楽しさを伝えている。
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Facilitator : 梅原 裕子 氏
SELF代表

メイクアップアーティストして、TVドラマ、雑誌、舞台メイク、ブライダルなど幅広い分野で活動。見た目の美しさの追求はもちろんのこと、心身共に健康であること、内面の美しさが引き出すチカラに着目し、現在は多くの飲食店のアピアランス研修やコーチングなどを手がけている。

■何事もトライアンドエラーで対応していく
■行ったこと全てが知識として蓄積されていく
■店舗にない商品の開発
■お店で出している料理の量り売り販売
■お客様からフィードバックした意見を参考にして改良していく
■お店にかざっているオリジナル作品の絵の販売などお店の体験を売る
■お店にあるワインやプレミアムなお酒のリストを掲載し、ボトルキープできるようにする
■将来的に必要なもの全てBASEでそろえられるような仕組みが欲しい
■買い物SNSの様な、物の背景がわかる、店舗とネットショップの連動の必要性
■原材料の表記が難しく悩んでいる
■ブランディングのためパッケージやデザインにもこだわる
■在庫問題は大きい。今後飲食店は収納スペースも必要
■今後、通販やデリバリーを強化しているお店にお客様が集まるようになる
■今はUberやタクシーデリバリーなども増えているので活用すべき
■写真は視覚に訴える手段として重要。工夫して撮影する
■店舗とネットショップの両方展開していく事が普通になる
■飲食のHow toを学べる仕組みが欲しい

ゼロからモノ作りをしていくお店

梅原 本日は「『eat 麻布十番』に学ぶ、コロナ禍のあらたなネットショップ戦略」というタイトルで、株式会社ディスカバリー代表取締役の佐藤幹さんにお話をお伺いします。

佐藤 『eat 麻布十番』の佐藤です。19歳から専門学校で料理を学んで、その後ずっと料理の世界に携わり、31歳で和食屋を独立開業しました。現在45歳ですが、麻布十番で『eat』というブランドで、同じ建物の地下一階と地上一階に肉和食と寿司和食という業態の2つのレストランコンセプトで経営しています。

地下の寿司屋は店の真ん中にキッチンがあり、お客さんが対面するちょっと変わったレイアウトで、寿司ダイニングの様な演出をしています。一階の肉和食は、焼いたお肉やすき焼き、しゃぶしゃぶなどを提供する「焼いてくれるお肉屋さん」がコンセプトになっています。

梅原 ありがとうございます。『eat』はオープンして何年くらいですか。

佐藤 5年ですね。

梅原 一番最初のお店作りを始めてからは何年ほどですか。

佐藤 最初のお店の「食幹」を渋谷に出したのが14年前ですね。

梅原 「食幹」も独自のコンセプトで、食に慣れ親しんでいる大人が日常使いできるお店として大人気でしたが、『eat』もオープンした当時はコンセプトやお店の作りとか、他では見ないスタイルだと思いました。どんなところからお店作りのコンセプトを考えられたんですか。

佐藤 私はずっと日本料理を作ってきたんですが、ビジネスとして色々な業態を作っていきたいと思っていたんです。そこで目をつけたのがお寿司でした。チェーンを中心としたすぐに食べられるお寿司屋さんと、2万円や3万円する、毎日いけない予約もなかなか取れない高嶺の花のお寿司屋さんがありますが、その間がどうしてないんだろうと。「何か美味しいの握ってよ」とか「天ぷらや、焼いた魚とかもつまみたい」っていうお店がありそうでなかったんです。僕の中ではダブルスタンダードって言っているんですけれど、上の高価格帯と下のカジュアルのいいとこ取りをした寿司屋をやりましょうっていうのが始まりですね。

梅原 地下と一階で魚と肉と分けたっていうのも面白いですね。

佐藤 オープンしたのは寿司屋が先だったんです。一階をどうしようかって色々と試していたんですが、何が食べたいかって多くの女性にヒアリングすると、「肉・お寿司・イタリアン」って必ずこの三つが出て来るんです。

梅原 私も好きです (笑)。

佐藤 お寿司は既にあるのでいいとして、和食から急にイタリアンのお店を出すのは無いだろうと思って、結果的に肉になるなと。でも、下の寿司屋ではお寿司を握ってお出しするし、料理を使って提供するという風に全て仕立てて提供しているわけですから、一階でもお客様たちに焼いてもらう焼肉屋というよりは、全部私達で仕立て提供できるようにしましょうよと、それを和の味で作りましょうという事で、肉和食っていう新しいコンセプトを作ったんです。「焼いてくれるお肉屋さん」っていうのはあまり無いと思いませんか。

梅原 そうですね、焼肉屋さんでたまに「このお肉は焼き加減が・・・」と言って女将が出てくるみたいなお店とかはあるんですけど、やはりエンターテイメントとして自分が食べるお肉を目の前でプロが焼いてくれるっていうとこは、食べる前からおいしさが倍増する感じはありますね。楽しいっていう感じもあります。

佐藤 ありがとうございます。焼いてくれるっていうとこが重要だと思うので、寿司屋と同じスタイルでお肉を全部仕立てて提供して、寿司と肉が両方楽しめるっていうことでやっています。

梅原 根強いお店のファンも多いですがこだわってやってきたこと、14年前に「食幹」を出されてからずっとお店作りでこれだけは変わらない、大事にしているものってありますか。

佐藤 手作りというか、どの店舗もゼロから物作りをしていますね。

梅原 それは、お店で提供するものももちろんそうだし、そういったコンセプト作りからお店の空間作りまで全てということですね。

佐藤 うちの社名はディスカバリーと言うんですが、お客様ご自身が見つけたとか、こういうことを発見したぞっていう風に思ってもらえる「空間や料理との出会い」がないといけないと思っているんですよ。それがエンターテイメントなんじゃないかなと。

梅原 以前からエンターテイメントって言い切ってらっしゃいますもんね。お客様自身が発見した時の、その楽しさやワクワクする感じが店作りの根幹にあるとすごく思います。

ところで、お店を長年やってきている中で、今回の新型コロナの様に大変な事ってありましたか。

佐藤 そうですね、1軒目のお店を出してすぐにリーマンショック、それが回復してきたら東日本大震災があったり、何年かに一度そういう大変なことがあって今回は新型コロナという感じです。